《リッフェルホルンの岩峰》
マッターホルンに登ったのだから、あとは静かにしなさい、というのが、通説だと思うのだが、
そうはいかない。
せっかく美しく厳しい岩場に《ライスイ》(来スイス)
しているのだから、その時間を最大限に活用したい。
ゴルナート鉄道に乗り、
終点の天文台が二つある展望台に着くと
目の前に焦げ茶色の岩塊が見える。
《リッフェルホルン》と呼ばれる岩山。
裏(南)側に垂直に切り立った200mの絶壁がある。
この岩をフリークライミングしようと云うのだ。
言っているのは、近藤謙司さん。
30時間前に、私をマッターホルンの頂上まで、
押し上げてくれた恩人。
またもや、ハーネスにロープを結び付け、
岩の人となる。
マッターホルン登攀でボロボロに筋肉痛になるのかと、
思いきや、全く疲れが残らなかったので、
一日だけ休んで、岩登りに向かった。
今回も、二人の尺取虫作戦、30mづつのピッチを、
7ピッチほど登る。
80度ほどの角度の垂壁で、
ホールドもスタンスもしっかりしている。
ツェルマットの街で買い求めたクライミングシューズで、
グングン登ってゆく。
登りながら、左を見れば、マッターホルンが、
右を見れば、スイス最高峰モンテローザが、
背後には、先週登ったブライトホルンが輝いている。
いずれも4000mを軽く超える名峰。
《岩登り》といえば、
「まあた、そんな危ないことをして!」
と目くじら立てられるものだが、
きちんとした装備と、徹底した安全感覚があれば、
危ゆさは、ほとんど無い。
他力本願か自力本願かの差だと言えよう。
・アナタが駅の階段を降りるのは、自力本願である。
・アナタがエスカレーターで降りるのは、他力本願である。
周囲に、名峰をそろえ、
これほど気持ちの良いクライミングもないだろう。
なんやかや3時間ほど岩場で過ごし、
街に向かって歩き降りる。
直行するは、レストラン!
お気に入りのビールを、これ見よがしに注文する。
「シュナイダーバイス!」標高2900mの岸壁 下には氷河下りの最後は一気にロープでダウン