旅先では、毎回ホテルの朝食バイキングを食べている。 スイス、ツェルマットでも変わりなかった。
目が覚めると、ホテルの朝食会場に向かう。
だだっ広いが、人は少ない。
どうやら、日本と同じバイキング形式。
まず、皿をとって、見渡すのだが・・・
数歩歩けば、食材ダッシュは終わってしまう。
数種類の薄く切られたハムとチーズ。
卵はない、肉もない、魚もない。
朝食とはこういうものかもしれない。
文句はないので、集めてゆく。
トースターに、小さめのパンを入れる。
その間に、ヨーグルトコーナーに目をやる。
プレーンに、イチゴ味に、(わからない系)のモノを、
ごっちゃり混ぜ合わせで、ボウル皿に注ぐ。
カレー用の大きさのスプーンで食べれば、
20回くらい口に運べるだろう量。
チンッと言わずに、トーストがコンガリ焼けた。
ブルーベリージャムのパックを掴んで、
ナイフで、一つ目のコンガリパンに塗る。
その上に、ハム1枚とチーズ1枚を乗せる。
パクリっ
朝食好きとしては、まあまあのお味である。
ただし、サラダが無いのがツラい。
野菜はさほど好きでないのだが、
食べられないとなると、渇望感が湧き上がってくる。
係りの方が、ホットコーヒーとホットミルクをポットで、
テーブルまで運んでくれた。
これは嬉しい。
望めば、自分でお湯に紅茶ティーバッグを入れて、
飲むこともできる。
さて、二日目の同じ朝食には、
パンはそのままに、ハムとチーズが倍化する。
つまり、ひとつのパンの上に、ハム2枚、チーズ2枚。
そして、次の日、さらにエスカレートする。
ハム4枚、チーズ4枚。
横から見ると、ミルフィーユみたい。
次の日、さらに、ハム8枚、チーズ8枚。
横から眺めると、ラザニアそっくり!
この状態の責任は、サラダが無いことに尽きる。
腹ペコ人間の腹に、サラダという、
膨らし物質を取り込めないからである。
っと、そのラザニアを口に運ぼうとした時、
テーブルふたつ離れた所に座っている初老のオジサンが、
両手の指をクルクル回す。
柔道の《指導》で腕をグルグル回す動きを、
指でしている。
どうやら、「パンを丸めて食べろ」と言っているらしい。
肩をすくめて、「それは無理だ」とジェスチャーすると、
今度は、縦に折り曲げる仕草をする。
「ホットドッグのようにして食べろ」と言っている。
「折曲がらない」とパンマイムすると、今度は、
片手にパンをのっける形で、上からバチンと叩いた。
「つぶして食え」と言っている。
目をまん丸くしていると、
ニヤリと笑うではないか。
オジサンは、私をからかっていたのである。
もし、私がバチンとやっていたら、
大笑いされたことだろう。
どこにもイタズラ好きはいるものだ。
あぶないあぶない。