尾瀬の話しをもうひとつ。 尾瀬の黎明期の頃から続いている山小屋。
《長蔵小屋》
「大自然の恩恵の下に集まりて、
この大自然の美を享受せよ」
初代の平野長蔵氏の言葉である。
今、4代目の「太郎」さんが小屋を継いでいる。
尾瀬がダムの底に沈まなかったのも、車が乗り入れられずに、
自然が残されたのも、この小屋主の方をはじめとした、
尾瀬を守ろうとした大勢の方たちのおかげである。
何気なく尾瀬に行き、日本の自然そのものを楽しめるのは、
先代の心のたまものだと、思いを新たにしたい。
その長蔵小屋の別館に、ピアノがあった。
それも、グランドピアノ!
これで、私が見つけた山小屋のピアノは7つになった。
恥ずかしながら、触らせてもらった。
いつもの曲を弾かせてもらった。
クロワッサンサンドを頬張った腹が鍵盤の近くで揺れていた。
遠くで、メボソムシクイの鳴き声が響いている。
10月の頭頃になれば、紅葉がすすみ、
見事なまでの秋の彩りになるだろう。
9月の初旬は端境期なので、尾瀬は比較的すいている。
ねらいどころかもしれない。
歩いている木道のすぐ脇に、水芭蕉の残骸があった。
周りに大きな踏み跡がある。
これは、クマが水芭蕉の実を食いあさった残骸だと知る。
恐らく人がいない時間帯に、現れてバクバク食ったのだろう。
あたりに、草が倒れ、歩き回った跡もある。
ただ尾瀬では、主役が人間となっている。
大勢の人間の前に、クマは出てこない。
人間を怖がっているからだ。
そうそう、長蔵小屋の前に、望遠鏡が三脚に据えられて、
どこかに向けて立っている。
覗いてみると、燧ケ岳(2356m)の頂上に、
ピントが合っている。
頂上で、登山者が手を振れば、見える。
覗いてみましょう。グランドピアノが・・・
チキンカレーの向こうに 燧岳2356m