飛行機好きなので、移動は空港にお邪魔することが多い。 よく利用する羽田空港には、本屋があり、
航空機関連の本が平積みで並べられている。
ほとんどが元パイロットや航空機を作る人たちが書いた本だ。
当然そこに、《墜落》の本はない。
当たり前だ、売れる訳がない。
お馬鹿な告白をすると、明日飛行機で移動するという際には、
あるテレビ番組を観る。
《航空機事故の検証》 CS放送
世界中で起きた過去の飛行機事故を扱っている。
実際の事故を、ドキュメント風に現地の俳優を使って、
再現している。
「事故調査委員」も、俳優が演じている。
実際の人物も登場して、事故を語ったりしている。
この事故調査委員、略して《事故調》の、
調査の徹底ぶりが面白い。
事故は主に、空港周辺が多いのだが、
それだけではない。
山の上、ジャングルの中、海の底、
ありとあらゆる所に、残骸が散らばる。
破壊された飛行機の残骸を徹底的に集め、
何が原因なのかを突き止める。
そして驚くことに、事故が起きてから、
事故調がやってくるスピードが、とても早い。
飛行場が現場だというのに、飛行機でしか来れない遠くから、
あっという間に彼らはやってくる。
ご遺体が収容されるのを待たずに、現場に入って、
ありとあらゆるモノを拾い集める――
ふむ、そんな番組をなぜ、
飛行機に乗る前に、わたしは観るのか?
「肝試しなのですか?」
いえいえ、そうではない。
過去50年以上前からの、飛行機事故の原因を、
突き止めることが、未来の事故を防いでいる、
と確信しているからだ。
かれらの優秀さと執念が、同じ事故を起こさないような、
方向に導いてくれている。
その安心で、我らは明日も飛行機の座席に座っていられる。
検証につぐ検証で、日進月歩の安全が進んでいる。
この番組を観ていると、たしかに昔より現在の方が、
事故が減っている。
特に、マシンの進化は著しいが、
人間のミスを少なくする努力が進化している。
「計器類の見え方」
「空港内の灯りの見せ方」
「管制官の会話の伝え方」
ヒューマンエラーを限りなく減らそうとしている。
もちろん、事故はかなしい。
ご遺族の気持ちになれば、
「こんな番組いいのか!」となる。
特に、日本の事故は生々しいので、きびしい。
「飛行機に乗る前に観て、怖くないのですか?」
いえ、むしろ安心したいから観ているのです。
そうそう、この番組は、日本語吹き替えバージョンです。スイス 谷間の丘の上の教会