《
ヘルンリ小屋への道》
3000m付近
「体調が異常に良いのですが」
マッターホルンから降りてきて、スイスの山岳を、
3つほど登ったりして、やがて日本に帰ってきた。
そんな折、自分の体調が、非常に優れている事実があった。
山岳のお医者様に、
私の身体に起きている事について訊いてみたところ、
明白な答えが返ってきた。
「いま、イシマルさんの身体は、高度の高い所に慣れてしまい、
酸素が半分の環境で生きていける身体になっています。
よって、血液をはじめ、リンパや神経や筋肉など、
ありとあらゆる器官が、活性化しています」
「それって、いつまで続くのですか?」
「一カ月ほど続くでしょう」
と言われて、一カ月を過ぎた。
つまり、いま私の身体は《常人》に戻っている最中らしい。
たしかにこのひと月、「疲れる」という言葉がなかった。
ビルの階段なら、10階まで駆けあがっても、
息があがらなかった。
夜眠ると、2時間で目が覚めた。
当初は、時差ボケかと思っていたのだが、
そのまま起きていても、平気だった。
その状態が、やっと終わりを迎えようとしている。
ようよう8時間眠れるようになってきた。
酸素半分で動けたカラダが、酸素全部使うようになった。
これは、いわゆる《高地トレーニング》である。
オリンピックなどのアスリートが、標高の高い高地で、
訓練して、大会に臨むやりかたである、
マラソンも、標高1500m以上の所で、しばらく過ごし、
平地に降りてきて走ると、心配能力が格段と上がる仕組み。
まさに、私の肉体に起きた現象だ。
これは、実際の感覚としても優れ、
エネルギーがミナギり、エンジンを全開したくなる。
ある意味、あぶない。
慣れていないと、暴走する可能性がある。
眠らないという要素もいただけない。
いま、やっと普通を実感するようになって、
《普通》はいいなと、つぶやいている。
「いやいや、それやってみたい」という方には、
簡単にはおすすめできない。
結構長い間、高度順化行動をしなければならない。
富士山などの高い山に、なんどもなんども登らねばならない。
標高の高い場所に居るだけでなく、
そこで運動をせねばならない。
これは、ツラい。
並みのツラさではない所が、おすすめできないユエンだ。
たとえば、富士山の山小屋に勤務すれば、
ある程度、高度順化はできる。
ただし、「ある程度どまり」となる。
やはり、付加のかかる運動が必要らしい。
では、高地トレーニングは、脳の活性化にはどうなのだろう?
もし、素晴らしい効果があるのなら、受験に役にたつのか?
びっくりするような研究に役に立つのか?
わたくしの感想を述べれば・・・
「はぁ~どうだかねぇ~そもそもがねぇ~」 ヘルンリ小屋までの登り