《
シマアジの刺身》
酒の飲み方の一考。
アメリカ映画を観ていると、昼間に客人に会うと、
グラスにウイスキーをゴポゴポと注いで渡すシーンがある。
するってえと、ふたりで、一気にあおる。
「あおる」とは飲み干すという意味だ。
こういうシーンを長い間、映画で観てきた。
あるいは、酒場のカウンターで主人公が、
「ダブルで」と注文し、
出てきたウイスキーグラスを一気にあおる。
ここでも、やっぱり「あおる」。
チビチビという副詞が登場しない。
よもや――《酒のつまみ》は一切登場しない。
事件にかかわった警察を退職した主人公が、
ウイスキーをチビチビやりながら、
ピーナッツをポリポリする映像はない。
ましてや、世界の破滅を救おうとしているヒーローが、
バーの片隅で、酒をチビチビやりながら、
刺し身に舌つづみを打っている姿は、ない。
なぜ、ないのか?
あってもいいのではないか。
殆どの映画の中では、酒を呑むシーンで、
《つまみ》は出てこない。
食べる時は食べ、
呑む時は飲む、
ビールもしかりである。
アナタに問いたい。
アメリカ映画の中で、ビールを飲みながら、
登場人物が、なにか食べているシーンを観ましたか?
缶ビールでも瓶ビールでも、必ずと言ってよいほど、
ポイとほおって渡し、(取りそこなったことはなく)
(泡が噴き出ることもなく)
受け取った主人公は、グビグビやる。
食べているシーンを、「無い」
と答えたアナタに更に思い出してもらおう。
ビールを飲んでいる最中に、ビールだけ飲んでいますか?
何か摘まんでいませんか?
口に放り込んでいませんか?
いませんよネ。
そう、彼らは、何も食べないのです。
ダイエットしている訳でもないでしょうが、
食べません。
何も食べずに、酒をだけ飲むと言う行為が、
不思議でならない。
食べたいが為に、酒をたしなんでいる私としては、
ただ、酒だけを飲んでいるアノ人たちに、
驚いている次第なのです。
決してマネのできない芸当に、
日本人の気質としては、したくないのに、
両肩をすくめてみたりしています。
口に出したくないのに、言ってみたりしています。
おお まい がっ
尾瀬の木道を歩く