小椋佳の歌《雨が空から降れば》この歌詞を唄っていて、サビの所で、いつもふと・・・
考え込んでしまう。
冒頭はこう始まる。
♪~雨が空から降れば
思い出は 地面にしみこむ
やがて、2番のサビになると・・・
♪~雨の日は しょうがない
公園のベンチでひとり
おさかなをつれば~
ここまで唄って、いつもハテ?となる。
「雨に日に公園のベンチに座る」 だろうか?
この詩は、小椋佳ではなく、別役実(べつやくみのる)の作。
劇作家である。
劇作家には変わった方が多いような気がする。
「変わった」とは誉め言葉なのだが、
どちらかというと、能天気な私には、
雨の日に、公園のベンチには座れなかった。
しかも、雨は「シトシト降れば~」と歌われている。
その上、「黒いコウモリ傘をさして~♪」とも。
まだ使い捨てのビニール傘が、
世の中にあふれていなかった時代の話しだ。
「黒いこうもり傘をさして、公園のベンチに座っている」
雨の日に、こんな哀しい絵づらを、思い浮かべる劇作家。
「変人」呼ばわりされても仕方ない。
あれから幾星霜。
先日、東京湾の船の上にいた。
いわゆる遊漁船という釣り船。
午前中に、空がにわかに曇り始め、風もでてきた。
すると、ザ~と雨が降り始めたのである。
雨合羽を持ってきていなかった私は、
バッグから折り畳み傘を取り出して、さした。
釣りは、そのまま続けている。
釣り船とは、周りをグルリとベンチが取り囲んでいる。
他の釣り人は、雨をしのぐために、船内の部屋に逃げ込んだ。
「雨の日に ベンチでひとり おさかなを釣っている」
私も、変わった人の仲間に繰り入れられてしまった。
この歌は、こう締めくくられる。
♪~おさかなも あめのなか~
劇作家の想いの中では、お魚は水という雨の中なのである。
サバも雨の中