15年前、ウインドサーフィンで相模湾を横断した。 その時に、友人に問われた。
「海って深いですよね、恐くないですか?」
確かに、海は恐い。
ただし、それは深さとは関係ない。
私がウインドで走ってゆく相模湾の水深は、2000m。
「恐い」の表現を、「溺れる」に置き換えると、
水深2000mでも水深2mでも、溺れるには溺れる。
つまり、自分の背丈を越えれば、
たとえ1万メートルでも関係ない。
今年、マッターホルンに登っている最中、
ナイフリッジと格闘していた。
ナイフリッジとは、
《ナイフのような尖った岩稜》と訳せばいいだろうか。
滑るとか、落ちるとかが禁句の世界である。
下を見れば、2000m眼下に氷河が連なっている。
「恐くないですか?」 質問を受ける。
答えは、海と同じだ。
2000m落下するのと、2m落下するのと、
落下してしまえば、同じなのである。
ゆえに、落下さえしなければ助かる。
海でいえば、道具から離れてサヨナラさえしなければ、
助かる。
2000などという、大きな数字に騙されてはいけない。
世の中的に云えば、詐欺師は大きな数字を言いたがる。
「10億円の取引がですネ」
我らが、10億円を見たことがない事をいいことに、
大きな数字を連呼する。
「この土地ならば、2億の値がつきます!」
と言って、「今ならば、2000万で買いませんか?」
と持ちかける。
持ちかけられたオヤッさんは、お尻の財布の中に、
2万円しか入っていない。
なのに、もし2000万あったら払いたくなっている。
「どうしよう、どこかで借りてこようかな・・・」
(自宅を担保に)
2000万がすぐにでも、2億円に!あひゃぁ~
オヤッさんに言っておきます。
その詐欺師は、アナタのお尻の財布の中の、
2万円をふんだくりたいだけです。「
あっ、タクシー代がない。え~と2万円 いや、1万誰か貸してくんない?」