
《
石鯛》
現代は、魚にとって受難の時代である。
海に生きている魚は、空を知らない。
人間が、地球の外側の宇宙を知らなかったように、
魚は、空という空気だけで生きている生物がいる事を知らない。
しかも、その空に、自分たちを攻撃してくる生物がいるなどと、
想像だにできない。
魚にとっての敵とは、
自分たちの周りにおびただしくいる恐ろしい奴ら。
自分よりも速く泳ぎ、自分より怖い顔をしているヤツら。
牙をむき出し、歯もむき出し、
喰うだけをテーマにしている凶暴なヤツら。
っと、魚はずっと思っていた。
ところが・・・最近、その狂暴なヤツらが、
まったく居ないにも拘わらず、仲間がフッと居なくなる、
目の前から消えてしまう、という怪奇現象が起こるようになった。
消える前には、予兆があることに気づいた。
それは――
我らが大好きなエビだの、イワシの匂いだのが、
大量に上から降って来る・・・
上というより、我らの泳いでいる目の前に突然箱が現れ、
そこから、エビだのイワシがゴッチャリとまかれる。
「おいおい冗談じゃないよ、あんまりじゃないか!」
パニックになった食べ盛りの皆んなが、大量投棄にとびつく。
すると――
あれっ、友達が空に向かって泳いでいった。
知りあいが空に向かって泳いでいった。
親戚も、義理のおじさんも、空に向かった。
哀しい事に子供たちも、空に向かって泳いでいった。
我も我もと、未知なる空をめざして旅立った。
ふむ・・・
空と呼ばれる上空に何か素敵な場所があるらしい。
それは何だろう?
そういえば以前、同僚の魚くんに聞いたことがある。
空のかなたには、竜宮城と呼ばれる所があってだネ、
いつも襲われる亀に、「ゴメン」と謝り、お願いしたら、
連れて行ってくれるという話を。
そうなのか、皆んなは、竜宮城をめざしていたのか?
・・・ふむ、それはいいとして、誰も帰ってこないのはなぜ?
そういえば、さっきの同僚が語るには、
竜宮城から帰ってくると、みんな、
ヨボヨボの干からびたジジイ姿になるらしいゼ。
空の世界では、《ヒモノ》と呼ばれているらしいゼ。
ふ~~ん
エボダイ