「さてと、一杯のんでから休みますかねぇ~」人間ドックの前日に、お酒をグイッとやるオジサンがいる。
夜の9時には、下剤を飲みなさいと小瓶を渡されている。
「ああた、明日人間ドックなんでしょ、なのにお酒?」
「あのねぇ、検査するからと言って、前日身を清めたのでは、
正しい検査ができないじゃないか、普段通りにしてなきゃ」
おかしな論理を吐くのである。
いつもと同じ状態でなければ、検査の意味がないと言っている。
悪いなら、悪いなりに検査しようという腹だ。
このオジサンの論理によれば、日々酒を呑んでいるのだから、
検査の前日だけ、酒を抜いたのでは、間違った結果が出ると、
主張している。
ふむ、いっけん正しいような気もする。
ただし、病院側は、そういう為の検査ではない。
医学的には、体内に食い物だの酒だのが入っていない、
素の状態のアナタを知りたいだけなのだ。
では、仮に歯医者で例えてみよう。
歯医者で治療をしてもらう時に、歯を磨かないで、
歯茎にカスがつまった状態で、
「おねがいしま~す」
と診察台に登れば、まず、きちゃないモノを取り除くという、、
意味のない作業から始めなければならない。
歯医者なら、強引に取り除けば済むのだが、
内蔵系の医者であれば、前日に酒をたっぷり喰らった人間を、
どうしたら、《素》にたどり着けるだろうか?
素顔で来てくださいと言って、しっかり化粧をしてきた場合は、
クレンジングで落として貰えば、事なきを得るが、
お酒をやめてきて下さいの願いを聞いてくれない患者には、
クレンジングは無い。
おっとぉ~
今、「患者」と言ったのが間違っているのかもしれない。
人間ドックに胸を張って病院の玄関の自動ドアを開ける人物は、
自分を患者とは思っていない。
よもや、患者などと呼ばれたら、怒り出す。
スピード違反してないギリギリで、パトカーにサイレンを、
鳴らされた気分になる。
ポイ捨てタバコをしようと、腕をあげた時点で、
お巡りさんに、笛を吹かれた気分になる。
いずれにしても、もう少しで、キップを切られるのだから、
文句を言う筋合いはないにも関わらず、
「未然」というレッテルを振りかざしたくなる。
「まだやってないじゃ~ん!」
そう・・・まだ・・・ネ。
でも、ほおっておいたら、アナタは未然じゃない人になるでしょ。
だから、フライングしてでも、辞めさせようとしてるんですヨ。
それが、「患者」と呼びたい理由らしいですヨ。