この写真のベッドは何?昨年、訪れたスイスのマッターホルンにある山小屋、
《ヘルンリ小屋》の寝室。
標高3200mの崖っぷちに、建っている。
登山者が泊る寝室は、上下2段の4人部屋。
ベッドの大きさは、小さめのシングルベッドほど。
山小屋のベッドとしては、大きくも小さくもなく、まあ普通。
ただし、上下2段ということは、当然、
上段にあがらねばならない人がいる。
写真を見てもらうと、縦の柱に小さな突きだし状の突起がある。
これを階段として使い攀じ登る。
攀じてマッターホルンに登るヒトたちには、
おちゃらこさいさいのハズ。
まあ、そこまではいい、文句は言えない。
しかし、問題は――上のベッドに柵がない点。
高さは、私の顔の位置ほど。
「片側が壁に接しているのだから、いいでしょう」
と、安心できるだろうか?
アナタはここで眠れますか?
寝返りをうてますか?
昼間、標高2600mから3200mまで登ってきている。
まあまあの、よい疲れがあるので、よく眠れる。
眠れるのは嬉しいのだが、こんな場所で気を失っていて、
大丈夫でしょうか?
その昔、同じような場所で眠った記憶がある。
ブルートレイン(寝台列車)
大分から東京まで、一昼夜かけて寝台列車に乗った。
《普通寝台》は、片側3段のベッドがある。
つまり、ひとつのコンパーネントに6人が寝ている。
すべて指定席だ。
私の席は、上 中 下 の上段のベッド。
窓側にあるハシゴで登ってゆく。
高さは、顔の高さほど。
そこに肩幅よりやや広い程度のベッドがある。
カプセルホテルの片側が解放されている趣きだ。
一瞬、(眠ると落ちるのではないか?)
と懸念が湧いたが、よく見ると、
帯状のヒモが、2本縦に張ってある。
胸とモモあたりが引っかかるような仕組み。
さて、列車の揺れに任せて、安心して眠りに入る。
っと夜半、突然目が覚めた。
なんと! 私のからだは宙にあった。
薄暗い中、目をまん丸く開いた私の腕が、
いっぽんの帯にしがみついている。
どうやら・・・
2本の帯の間から、腰を下にして滑り落ち始めたらしい。
落ちている最中に目が覚めたらしい。
とっさに片手で帯に掴まったらしい。
しかし、落ちる速さはあまりにも急で、握力が間に合わない!
ゴンッ
裸足のカカトが、床に激突した。
帯から指も離れ、ドスンッ オケつが床に落ちた。
もし誰かがみていたとしたら、こんな映像を見ただろう。
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最上段で横たわっている男のオケツが、
50センチの隙間がある2本の帯から抜け出てきた。
やがて、ベッドの脇を越えズルりと宙に浮かぶ、
そのままズルズルと落ち始めた。
あっという間に、からだは落下をはじめ、残された右手が、
帯を掴んだ。
しかし、その時には、足のカカトが床に激突し、
勢いで、掴んだ指も外れ、からだ全体がドダンと落ちた。
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目が覚めてから、1秒間の出来事である。
驚いたのは、私だけではない。
下段に寝ていたおばちゃんが、ビックリした目で、
落ちたまま床に横たわっている男を睨みつけている。
なにか悪い事が起きている と感じたようだ。
向かい側の下段ベッドのオジサンも目をむいている。
ひたすら謝り、再びハシゴに足をかける私。
っということは、ケガはなかったらしい。
ヘルンリ小屋のテラス 標高3200m