30年ほど前、首都圏の電車が、ストライキをやった事があった。
小田急と西武以外の、すべての鉄道が
10日近く止まったのである。
地下鉄もだ。
当然、通勤、通学が
出来ない。
たいがいの会社は
休みになった。
しかし、大きな会社は、休まなかった。
その大きな会社が集まっている、大手町という所で、
イシマル、喫茶店のアルバイトを、していたのである。
『明日から
来られる人いるかい?』
店長が言う。
「
来られますが。」
イシマルが応える。
ストライキ当日から、<来られる人>イシマルが歩き始める。
片道、
3時間半歩くのである。
往復
7時間の通勤だ。
喫茶店の実働時間は6時間。
おかしな労働になった。
近所のホテルに泊まりこみの店長と二人だけの労働が
10日近く続いた。
そして、やがて、ストライキは終わった。
同時に、通勤遠足も終わった。
『ところで、君、どうやって通って来てたの?』
「歩いてですが・・」
『あっそう』
これだけだった。
遠距離通勤の事は言わなかった。
ボーナスはくれなかった。
帰りの電車で、当時流行っていた歌を口ずさんだ。
♪~生まれた~時がぁ、悪い~のか・・
それとも~オレがあ~悪いぃ~のかぁ・・♪