入水鍾乳洞に入った。
<いりみず>と読む。
福島県にある。
ただの鍾乳洞ではないのだ。
洞窟ファンなら泣いて喜ぶ、素晴らしい
探検洞なのだ。
700円を払うと、入り口で、ロウソクとマッチを渡される。
番号のついた
フダを、腕に付けられる。
(何の
フダだろう?)と思ったあなた。
あなたの疑問が、人を育てます。
行程1時間。
洞内温度14度、涼しい。
水温10度、非常に冷たい。
(
水温って何だろう?)と思ったあなた。
そういう疑問が、人を進化させます。
とんでもないのだ!
この洞窟は、途中から、
明かりが無くなるのだ。
正確にいうと、あったり無かったりするのだ。
そして、最終的には、まったく無くなる。
唯一の明かりは握り締めているロウソクの明かりだけ。
しかも、天井から常に、水がしたたり落ちている。
その水がロウソクにかかると、ジュッと消えてしまうのだ。
どうする?
手探りで、ビニール袋に入れてあるマッチを取り出し、
濡れている手で、そっとつまみ出し、シュッとするのだ。
それが出来ないと、
外に帰れなくなる!
もうひとつ問題がある。
足元に水が流れている。
その水の中をジャブジャブと歩くのだ。
この水が非常に冷たい。摂氏10度。
最初に足を漬けると、痛い。
足が
千切れそうに痛い。気分が悪くなる。
吐きそうになる大げさな人もいる。
しかし、不思議なことに、5分間がまんをすると、
あらら、平気になるのである。
さらに、洞窟は狭い。中肉中背のイシマルでさえ、
必死でくぐり抜ける場所がいくつもある。
さらには、
四つんばいでなければ、通れないような所が、
しばらく続いたりする。
当然、ケツまで、水に漬かっている。冷たい。
ズボンもパンツもびしょ濡れである。
そんな時に、フッ・・
ロウソクが消えるのだ。
懸命にマッチをするのだ。
暗闇で・・
もし万一、マッチをポロリと水の中に
落としでもしたら、
真の闇と水音だけの世界に閉じ込められるのだ。
・・いつまで?
『おい、7番のフダの客、まんだ出て来ねえべなあ。もうちっと
待ってから捜索してみっか・・』