韓国の空港に急いでいた。
日本に帰る便にぎりぎりなのだ。
手にはお土産をぶらさげていた。
韓国の家庭で頂いた大量の
キムチだ。
大きな
タッパウエアを3段に縦に積み上げたモノだ。
空港に着いた。
荷物検査の機械に3段タッパを乗せる。
黒いビラビラの中にベルトコンベアで入っていく。
ドタン!
大きな音がした。
ベルトコンベア内の天井は、入り口より、
一段低くなっているらしい。
当然、タッパは
つかえる。
そして、
倒れる・・ドタン
見ていると、ベルとコンベアが真っ赤になって出てくる。
その後に、口を開けた3段タッパが続いている。
キムチが
散乱している。
空港職員が大声でイシマルを怒鳴り始めた。
(あのね、言葉わかんないし、時間もないのよ。)
あわてて、素手で、キムチをタッパにかき集め、詰め込み、
飛行機へ走った。
悪いことに
満席だった。
3列の真ん中の席だった。
両隣が馬鹿でかいアメリカの方だった。
冷静に見ると、イシマルの体、
キムチまみれである。
殺人事件の犯人と思われても仕方ない。
両隣で、英語がわめき始めた。
英語を勉強していなくて正解だった。
駅前に留学してなくて良かった。
だが!問題はそれで終わらなかった。
あまりにも急いでいた為、
ウオンを円に換えるのを忘れてしまっていた。
成田では、換金出来ないのだ。
つまり、成田に着いたものの、そこからの
交通費がない。
電話代もない。
うう~知恵をしぼった結果、恥をしのぶ事にした。
韓国行きの出発便に並んでいる列に話しかけたのである。
ウオンを円に両替してくれ・・と
キムチくさい殺人事件の犯人が、あまりに
怪しかったのか
みんなにソッポをむかれた。
結局、成田の交番で、お金を借りたのである。
交番で、借用書にサインをしている殺人犯は臭かった。