
~昨日の続き~
この竹田の武家屋敷は古かった。
そして、発見した!
けんじろう君の部屋に、
隠し部屋があったのだ。
敵に襲われた時に隠れる為のものらしい。
なんと、天井にあるのだ。
天井からぶら下がった紐を引っ張ると、
ギィーと音を発てて、真っ黒い階段が現われる。
上から降りてくる。
そっと、登っていく。
広さは4畳半だが、高さは、座ってれば頭は付かないくらい。
明かりは当然ない。
小学6年生のカッコウの遊び場になった。
『
廊下がきたない!』
突然、父親が言い出した。
そりゃそうだろう、古い屋敷だもの、木が真っ黒になっている。
それを、きたないと呼んでいいのだろうか。
『
磨こう!』
父親は、
迷いのない人だった。
家族5人がタワシを持ち、廊下のハシからゴシゴシやり始めた。
半日やった。
1メートルほど、白っぽくなった。
白っぽくはなったけど、綺麗になったとは思えない。
『
やめよう!』
父親は引き際も、
迷いのない人だった。
『
庭に野菜を作ろう!』
又、父親が言い出した。
庭って言ったって、普通の庭じゃない。
築山があったり、池があったり、ご立派な庭である。
何百年か経った庭園である。
そこを掘り返し始めた。
シベリア抑留から命からがら帰還した、父親にとって
野菜を植えていない地面が許せないらしい。
男手3人、一日で、畑を作ってしまった。
そこに、ナス、きゅうり、トマト、おくら etr
土地が肥えていた分、いくらでも実がなった。
『
廊下がきたない!』
え~!だからもうやめようよ~
よしこうしよう・・と父親はツルツルのベニヤ板を
買ってきて、張り巡らした。
おまけに、けんじろう君の部屋にも、張り巡らした。
今風にいうとリフォームである。
戦争から帰ってきて間もなかったからなのか、
<文化財>的な考えを知らない、父親であった。
そして、あまりにもベニヤがツルツル過ぎて、
年中、家族の誰かがころんでいた。
『
壁がきたない!』
やめようよお~!