<今日のお昼、うなぎ>
この言葉、そそられる。
うなぎは大好きだ。毎日でも食べたい。
ごめん、毎日は言い過ぎだ。
一週間に一回は食べたい。
あの、熱々のご飯の上に、ぼっこり盛られた肉厚のうなぎ…
ジュクジュクにひったったご飯…
<接待にうなぎ>
ところがどっこい!
うなぎほど、
接待に向かない食事はないのだ!
『では、今日のお昼、うなぎ…などいかがでしょう』
初めて会った
商談相手がのたまう。
食べさせてくれると言う。
彼らとは、初めて会っているのだ。
とんでもなく堅苦しい。
男女のお見合いに近い。
『うな重 松4人前、よろしく』
目の前の背広の彼が、注文をしてくれる。
しばらくして、そのうな重が届いた。
さて、ここからだ。
この会食の主目的は、商談がうまくいくこと。
円滑に会話が進む事である。
4人とも、目の前のうな重を見つめている。
何か、話しの取っ掛かりを探している。
一人が勇気を出して、喋った。
『いいツヤしてますね、このうなぎ』
しばらくの沈黙…
又一人がポツンと
『やっぱね、うなぎはね、うん、これくらいね、うん…』
会話が続かない。
『染みてますネェご飯』
うな重の最大の欠点は、目の前に、
<うなぎ>と
<ごはん>と
<漬物>しかない事なのだ。
さて、皆さん、これが鍋だったら、どうでしょう?
とんかつだったらどうでしょう?
ラーメンでもかまいません。
いろんな食材が溢れていて、会話に困らないでしょう。
ところが、うなぎは、会話の題材があまりにも少な過ぎる。
『このキュウリの漬物がいいですねえ』
やっと出たセリフがこれだ。
これじゃ、商談は盛り上がらない。