
~
ふわり~
まさに、ふわり としかいい様がない。
昨日の続きの大冒険は、ふわりで始まった。
巨体はグングン大空に舞い上がっていく。
揺れも振動もない。思ったより静かだ。
うるさいのは、自分達だ。
船だ!橋だ!ビルだ! ギャーギャー!ワイワイ!
飛行機だとあっという間に雲の上に上がってしまうが
飛行船は高度が低い。
150~300mの高さを時速50キロで進む。
USJのアトラクションに並んでいる人達が
手を振っている。
こちらも
手を振る。
仁徳天皇稜の前方後円墳に飛行船の陰を写す。
法隆寺、五重塔を見上げた人達が、
飛行船に気付き、
手を振っている。
おっ、もう奈良に入ったか。
若草山にピクニックの人達がおにぎりの
手を振っている。
奈良公園の鹿が気付いて、
ツノを振っている。(なバカな)
飛行船の窓はでかい。
透明のアクリルで出来ているのだが、新幹線の窓より
はるかにでかい。
最後尾の窓などは、外に傾斜しており、もたれると、
空中に身体を預けている格好になる。
アクリルがたわむので、相当怖い。
『小窓も開きますよ』
小窓から手や顔を出す。風が気持ちいい。
船は琵琶湖へ~
この 船 という響きがいい。
「英語では、エアシップといいます」
機長の説明に、隣のおさむちゃんが
『捻挫で張る奴ですか?』とボケてくれる。
琵琶湖は広かった。どこまで行ってもビワコだった。
最後尾でいねむりをする。
何という贅沢だろう。
空中のうたたね・・・

帰りは京都を通り、大阪から関空へとコースが決まった。
(コースはちゃんと決まってないの?)
そうなんです、割と、ルーズなのだ。
そうか!
イシマルひらめいた。
携帯電話を取り出し、
バタヤンにメールを送った。
バタヤンとは(3月7日参照)に登場した友人だ。
京都大阪間に住んでいる筈だ。どうか見付けてくれ・・
京都では、有名所を辿って行く。
そうだ、太秦の東映撮影所に行って下さいと言ったら、
はいよ、とばかり、寄ってくれた。
飛行船を
タクシーよろしく使っている。
(おおいるいる、小道具さんが、刀を運んでいる。)
プルルルル~
京都を過ぎてしばらくした時だ。
『
浮いてる!浮いてる!今目の前!』
バタヤンの絶叫が、電波の薄い携帯からガリガリと聞こえる。
見下ろすと、バタヤンが、
土手の上を自転車で懸命に走っている。
「すみません!
クルリと旋回してもらえますか?」
ようそろうとばかり、機長は、船を傾けた。
見事にバタヤンの頭上で、大きなとんびが輪をかいた。
ピンヨロ~
興奮したバタヤン、そのまま道を外れて、
土手に落ちてしまった。
おまけに、その背後にはバタヤンのお母さんがママチャリで
追いかけて来ている。
バタヤンを助け起こし、(後で知ったが)
母「イシマルさん、せっかく来ぃはったンなら、
お茶でも飲んでいけばええのに」
確かに、飛行船をタクシーみたいに使ってしまったが、
お母さん・・<お茶は>、無理だと思います。
我らの飛行は、6時間の旅を終え、
夕陽に照らされた関空へ・・
世界最大のツェッペリン号 世界一周したいな。