ピカっゴロ! 雷は怖い。
と思っていたら、犬も猫も怖いようだ。
と思っていたら、馬も牛も、カモメもとんびも怖いらしい。
と思っていたら、思いもしなかった動物も怖がる事が解った。
<魚>
海釣りに行った。
途中で、雲行きが怪しくなって来たなと思ったら、
ピカっゴロゴロロロ!その途端、魚がぱったり釣れなくなった。
餌を食べなくなった。
海のハイエナとも呼ばれ、餌を付けていない
ハリをも食べて
すぐに釣れてしまうソーダカツオさえ、釣れなくなった。
理由は、
雷が怖いのである。
(漁師が言うんだから間違いない)
怖くて、食事どころではないのだ。
どんな怖がり方をしているのか、水の中を見てみたい気もする。
魚の王様、鯛でさえ、震えているのだ。
よもや、お調子者のカワハギなんか
一目散に穴倉に避難している筈だ。
しかし、どうもこの事実に納得がいかない。
なぜ、魚は雷を怖がるんだ。
今日行ったあの釣り場所なんて、10万トンクラスのタンカーが
バンバン行きかっているぞ。
潜水艦もよく通るぞ。
そっちの方がよっぽど怖いだろうに。
君たち魚に聞きたい。
誰ぞ
雷に打たれた魚がいるとでもいうのか?
(我ら人間様はな、打たれた人が大勢いるから、怖がってるんだぞ)
魚さん達よ!
よーく考えてみよう。雷を怖がる暇があったら、
もっと切実な問題があるでしょうが。
今、君達が食事をしていた時、
誰かいなくなったでしょ。
突然、上の方に、慌てた感じで上って行ったでしょ。
アレはぁ、何をしに行ったのかなあ?
いいのかなあ、ほっといて・・
兄弟とか親戚とかが、楽しい会食の最中に
ピューンと上がって行ったでしょ。
帰って来ないでしょ、ほとんど。
所謂、失踪しているんだよ。気にならないのかなあ?
毎日毎日、相当の近しい友人達が失踪事件に
巻き込まれているんだよ。
いいのかなあ、ほっといて・・
しかも、幸いな事に誘拐されてる最中にからくも
脱走した友人が
いる筈なんだけど、彼らから、何か聞いてない?
この食事は罠であるぞ!とか・・
聞いてない?
それとも、君ら、仲悪いのかい?
これほど、身に迫る危機があるというのに、
たかが雷くらいで、ヘソ隠すなっちゅうんじゃ。
魚のくせにだらしない。
まあ、我ら釣り人も、竿ほっぽり出して、
船倉に一目散だったけんどね。