
「一輪車に乗れる」
と云うと、子供ならいざ知らず、
50才を過ぎた私の年齢ではびっくりされる。
「サーカスにでも居たんですか?」
うん、居たんだ。
サーカスで暮らしていた事があるのだ。
正確には、ピエロのアルバイトをしていた。
その時に教えて貰ったのが一輪車。
最近は、子供の教材にまでなって普及しているが、
大人になって始めるのは、なかなか難しい。
何より
勇気がいる。
何故一輪しか無いのに
バランスをとっていられるのか解らない。
人に手を引かれても立っていられない。
しかし、一旦乗れる様になると、こんな面白い乗り物もない。
まず驚くのは、動く方向が
自由自在だと云う事。
前に直進は勿論、左右にやんわりとも曲がれるし、
急角度にも曲がれる。
上手くなれば、バックも出来る様になる。
ピョンピョンとジャンプも出来る。
そして一番の驚きは、
両手が空いている事だ。
自転車の両手離しをずっとやっているのに似ている。
両手が空いていれば何かしたくなる。
サーカスでは、ジャグリング(お手玉)をやるのだが、
何をやってもいい。
ジュースを飲んでもいい。
絵を描いてもいい。
アメリカでは、一輪車に乗りながら
バスケットボールの芸を見せるチームもあった。
難しい一輪車もある。とてつもなく背の高い奴だ。
3mを超えるものまである。
究極の難しいモノは、
サドルの無いモノだ。
輪とペダルしか付いていない。
これ乗れるの?
さすがサーカス、乗れる人がいる。
一輪車のワザで最も難しいのは、何だと思う?
それは、
じっと止まっている事なのだ。
止まるとパタンと倒れてしまう。
イシマルピエロの
得意技は、こんなだ。
独立したハンドル部分を前に持って乗るのだ。
そして、一輪車との間を、太いゴムで繋ぐ。
すると、一見普通の自転車に見える。
酔っ払ったピエロが普通に自転車を漕いでいると、
突然、グニャっと前に伸びたり、
縮んだり、グネグネ捻ったり・・
子供たちは大喜びであった。
21歳のイシマルも大喜びであった。