
日本で一番高い山は何でしょう?
富士山。
では、二番目に高い山は何でしょう?
さあ、答えられるかな? かな?
すぐに答えた方は、随分山に詳しいですね。
そう、答えは・・南アルプスにある。
<
北岳> (きただけ)
高さは3193m
富士山が3778mだから、次男坊は随分控えめな奴だ。
その北岳の頂上直下に<パットレス>と呼ばれる
高低差600mの岸壁がある。
その最下部に、19歳のイシマル君が一人で
取り付いていたと思って下さい。
「あちゃ、こりゃ無理だ、迂回しよう。」
岩登りを断念し、迂回路を頂上めざす。
「なんか、風が滅多やたら強いなあ」
稜線に辿り着いた途端、呼吸が出来ないほどの烈風に襲われた。
ピ~~~~~~~~~~!
当時私は、テレビも見ず、ラジオも聞かず、
新聞すら取っていないアホな青年だった。
山登りに出かける前に、気象情報を調べなかったのである。
時は秋。
大型で非常に強い台風が日本列島を襲っていた。
そいつは進路を東にとり、南アルプスを、
通過しようとしていた。
風速は平地で30メートルを遥かに超えていた。
まさにその刹那、アホな青年が
日本で二番目に高い山の
稜線に辿り着いたのである。
「うわあ~身体が浮くぅぅ~~!」
岩にしがみ付いた身体が、風で浮き上がる。
端午の節句のコイノボリさながら、水平になびいている。
ふわふわと空中に浮いている。
『そんな事あるの?』
と思われた方・・
はい、その浮いている最中に、私も思いました・・
『こんな事あるの?』
しかも、私の身体には、30キロの荷物が背中に
背負われているのにも拘わらずだ。
ピーーーーー!ふわふわ~~~!
この手を離したらどうなるのだろう?
さっき迂回した600mの岸壁に吸い込まれるのだろう。
この先私は、このコイノボリをどうしたらいいのだろう?
ところが、風というモノはうまく出来ていて、
一定の風速は保てない。
ひょっとあるとき、
風速20mの微風(?)になる。
ドスン!
身体が地面に落ちる。
その瞬間を狙って、赤ん坊の様にハイハイする。
ピーーー!
『来た!』
再び、しがみ付く。
コイノボリになる。
この繰り返しである。
どれくらい繰り返しただろう?
暗くなる前に、頂上直下の山小屋にホウホウ辿り着いた。
着いたものの、それから眠るまで、山小屋の主人に
<気象について、風について、生きると云う事について>
延々と説教を頂くことになった。
あれから30数年経ち、今では私が、アホな若者に
説教をたれている。
『アホたれ!今海上で、何メートルの爆風が吹いてると
思っとんじゃ!ほら早く!
ウインドサーフィンで
海に出らんかい!』