
<外から帰ってきたら、手を洗う>
小さい頃よく言われた。
勿論、大きくなっても洗わなくてはならない。
玄関を入ると真っ先に、洗面所に向かう。
ジャーーー
蛇口をひねるや、石鹸を手に取り、
クチャ、クチャ、コネコネ。
ブクブク。
この状態になって、初めて
自分が
長袖シャツを着ている事に気付く。
アッ!
一瞬、どうしようか迷う。
このまま洗えるか?
やはり、そでは水で濡れるだろうか?
ええいままよ・・とはいかない。
まず、右手の人差し指と親指を使い、
左手のヒジあたりのシャツを摘み、クイッと引っ張りあげる。
同じ動作を反対の手でやる。
ちょっとだけ、だが確実に石鹸がシャツのヒジに付着する。
この時、思うのだ。
いつもいつも、この動作を繰り返している。
石鹸をまぶしてから、気付いている。
なぜ、
蛇口をひねる前に、袖をめくらないのだろう?
なぜ、こんな簡単な事前動作を学習しないのだろう?
この先、学習するだろうか?
もう何十年も学習していないのだから、
今後も軽々と学習するとは思えない。
どうすればいい?
洗面台の鏡に、張り紙でもすればいいのだろうか。
<
まず、シャツをめくれ>
張ったはいいが、これを見なければ、意味がない。
確実に見る場所といえば、
洗面台の中だ。
そんな水のかかる所に、紙類は置けないので、
洗面台に直接マジックで書いてしまおうか。
しかし、他人に見られたら恥ずかしいな。
<まず、シャツをめくれ> って
それじゃ、食卓テーブルの上にマジックで、
<まず、ハシを持て>
と書いてあるのと同じじゃないか。
『わたしは、必ず、めくってから、洗いますよ』
という方!
あなたは素晴らしい。
素晴らしいのはあなただけでなく、
あなたのご両親も素晴らしい。
よくぞ、躾けられたと拍手をしたい。
んで、イシマル家はどうだったかって?
それはそれは、厳しく躾けられましたよ。
でも、いう事をきかないボンクラはどこにでもいるようで・・・