
「昼食は、ケータリングになりま~す」
撮影現場の助監督がのたまう。
通常、ドラマの撮影中、食事はほとんど弁当である。
どこかの業者から買った弁当が支給される。
ところが、いつもいつも弁当では飽きるだろうってんで、
製作が気を利かせて、
ケータリングなるものをやるのである。
ケータリングとは、端的に言えば、
レストラン外でやるバイキング料理である。
野外などのロケ現場に、
暖められた料理が並ぶテーブルに向かって列をつくり、
トレイにご飯や吸い物、オカズを乗っけていくのである。
最も多い料理は、カレーライスだ。
やはり、いくつになっても、カレーはみんな好きだ。
ついつい食べ過ぎてしまう。
次に多いのが、豚汁だ。
そして、トンカツ、メンチカツ、と続く。
いずれも、料理が暖かく、疲れた心をほっこり緩ませてくれる。
ケータリングが、二日続くと、
「この番組の制作は、優秀だ」と思ってしまう。
三日も続けば、
「最高のスタッフだな」と妙な、感激までしてしまう。
ところが、喜んでばかりもいられない。
たまには、こんなケータリングもある。
ご飯とオカズをトレイのお皿に、盛り付けていって、
控え室に戻ってくる。
ハシをパチリと割り、さあ食べるぞ~
んん~?
目の前のオカズを冷静に観察すると・・
これって、
普通の弁当を一回バラして、
それを拾い集めただけじゃ~ん。
さすがに一回バラすような事はしていないだろうが、
それと、内容は一緒じゃ~ん。
やんわり騙されたようなもんだが、
気付かなければ、ケータリングだと思って気分はいいのだ。
気付いたヤツがバカだったのだ。
私はバカだったのだ。
詩人 中原中也は、『知っちまった悲しみに~』
と詩ったが、
ケータリングの正体を<分解弁当>と、知っちまった悲しみに、
私は、泣きぬれているのだ。