
定食屋に入る。
最近のシステム化された、御飯屋さんに入る。
入り口近くの自動販売機で、食券を買う。
カウンターテーブルに座る。
カウンターは向かい合わせになっている。
さあ、このカウンターが面白い。
例えば、吉野家の牛丼などの店では、カウンターに座れば、
お向かいさんの顔が見える。
ところが、この店(宮本むなし)などでは、
お向かいさんの顔は見えない。
向かい合わせのカウンターの間に、頭の高さまで衝立がある。
しかし、
下側、20センチくらいが空いているのだ。
つまり、握手をしようと思えば出来る空間があるのだ。
すると、どうなる?
丁度というか、ピッタリというか、
お向かいのトレイの献立が、すべて拝見出来るのだ。
彼は、ハムエッグ定食を頼んだらしい。
<彼>とわかったのは、少しだけ垣間見える
縦じまのワイシャツとネクタイから想像させて貰った。
彼が、部類の
卵好きだという事も分る。
ハムエッグが付いているのに、別品で、目玉焼きを頼んでいる。
その上、横に卵の殻が転がっている所を見ると、
生卵のボタンも押したらしい。
その生卵を最初に掻きこんだ形跡が、ごはんに残っている。
時折、ハシがす~と降りてきて、ハムを摘む動きが面白い。
ハムが、なかなか千切れず、いらいらしている様子がわかる。
彼は、
エッグをプチっと潰してハムに塗りたくる派である事も
判明した。
通常の定食屋では、こんな観察は出来ない。
視線を感じた彼に、トガメの睨みを受けるであろう。
ところが、ここでは、見放題。覗き放題。
「おまちどうさま~」
やっと、私の<
サンマ焼きと出し巻き卵定食>が来た。
別品で、納豆と生卵のボタンを押した。
こちら側の人も、
卵好きな事が、彼にバレタかもしれない。
でも、彼の様に、
いきなり
卵だけを掻きこむ、なんて野蛮な振る舞いはしない。
納豆を捏ね、その上に卵をかける。
あくまで、納豆の付属物としての卵利用である。
「出し巻き卵はどう説明するねん?」
あれは、サンマ定食に、最初から付随していたのである。
きっと、
卵好きの彼が、ネチネチと観察している筈だ。
そう簡単には、出し巻き卵に、手は出さないでおこう。
おっ、彼のハシが
海苔に伸びた。
そんな付属品があったのだ。
そして、その海苔を、エッグを食べ終えた皿に
ゴシゴシとなすり付けている。
なすり付けた挙句、ひょいと裏返し、
裏も、ゴシゴシやっている。
ビトビトの海苔を摘んだハシは、やがて上に消えていった。
しばらく、画面に何も現れない。
ん・・どうしたんだろう?
すると、ドスン。
トレイの両側に、御飯を持った手と、
ハシを持った手が落ちてきた。
よほど、美味しかったに違いない。
感嘆の溜息をついているのだ。
よおし、こうなったら私の
魚食べの妙技を見せてやろう。
いかに、魚を隅々まで、頂くか、お見せしよう。
サンマをほぐす。
あっという間に、全身の身をたいらげる。
通常、ここで、食べるの完了となる。
だが、私の
ツイバミはここから始まる。
サンマの小さな頭を
ツイバム。
原型が無くなる。
尻尾を
ツイバム。
尻尾そのものが無くなる。
骨をシャブル。
あれっ、画面が動かなくなったな。
そ~と、体を低くし、彼を見る。
ありゃ、もう居ないじゃないか。
見てくれなかったんだ・・・私の
ツイバミを。