目が良い
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イシマル、眼がいい。
しかし、眼が良過ぎるのも、考えもんだ。

街で、知り合いと遭遇する事がある。
目の前にばったりというのなら、問題はない。
「やあ、こんちは」 で済む。
問題は、離れた距離での遭遇だ。
「やあ」 と声を掛けずらい距離・・
20mくらい離れた距離で、お互いがお互いを認識した時だ。

何か、出会った事に対する表現をしなければならない。
「やあ」はまだ言えない。
「やあ」の代わりに片手を上に挙げたいのだが、
今、挙げてしまっては、その20mを歩く間、
ずっと挙げていなくてはならない。
「やあ」の手は、一瞬挙げて、すぐ降ろすと相場は決まっている。

では、どうする?
他に選択肢があるか?
ない・・だから、つい、口で形だけ作って、
「(どうも、どうも)」をパクポクやってしまう。
それでも、この空間と時間を埋め尽くせない。
もう一回、「(どうも、どうも)」を繰り返す。

これもすべて、お互いの眼が良く見えすぎたセイだ。
私の場合、こんなものでは済まない。
以前、某テレビ局の地下の廊下を歩いていた時の事だ。
その廊下は長いことで、有名だった。
50メートルほどあった。
その端っこから、歩き出した時、
折りしも、反対側から歩いてくる、知り合いのディレクターと
眼が合ったのだ。
どのくらい知り合いかというと、もの凄く知り合いではないけど、
普通に知り合っている程度だ。
その彼も眼が良いことを知っている程度だ。

お互い、眼が合った事を悟られた
一瞬、片手が挙がりかけたが、抑えた。
「こんにちは」
を口の形だけでも動かそうと、彼が口を開いたのが見えた。
が、すぐに閉じた。
さあ、50メートルは長い。
双方が歩み寄っても、20数秒かかる。
しかも、その廊下、あまり人通りがない。
周りの人に話しかけながら、というマギレが出来ない。

眼を逸らして、だんだん近づくものの、
相手の考えている事が手に取る様に分るのが辛い。
だって、自分の考えている内容と同じなのだ。
なんとか、マギレたい。
なんとか、他のモノに注意を持っていきたい。
それも、積極的ではなく、しょうがなく、他のモノに注意が
向かざるを得ない状況がほしい。
しょうがなく、
所々にある部屋の扉の文字を、読む事にした。

 102

なんだよ!それだけかい!
いつもなら、<○○寝台列車殺人事件簿スタッフ部屋>
とか書いてあるじゃん、
なんで、今日ばかりは、ルームナンバーだけなの?
なんか、マギラわせて・・

よし、もう随分格闘したから、そろそろだろうと
相手を見やる。
え~!まだ半分しか、歩いていないのかあ~
しょうがない、ここらで、片手を挙げちゃえ!
ヒョイ!
つられて相手もヒョイ!
これが、いけなかった。
これまでは、「とても近づいてから挨拶しましょうね」
という暗黙の了解があったのだ。
それを私が破ってしまった。

手を挙げたままの相手の足取りが速くなる。
こっちも速くなる。
前傾姿勢のまま、前進する。
よし、あと少しだ!
あと少しすれば、すべてが終わる。
ようやく、声が聞こえる圏内に入ってきた。
よし、もう大丈夫だ。
「やあ・・」
と、発しかけた、その時だ。
ガチャリ、手前のドアが開き、
そのディレクターの上司と見られる御仁が、出現したのだ。
当然、彼は、上司の方に歩み寄る

その後、私はどうしただろう?
片手をゆっくり下ろし、下ろした手で横にあった
トイレのドアノブを回していたような気がする。

眼がいいのも、困りもんである。
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by ishimaru_ken | 2007-10-04 08:00 | 昔々おバカな話
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