
<最後の晩餐>
死を迎えるにあたり、最後に何を食べるかで頭を悩ます。
私なんぞは、
生卵かけごはん でOKだ。
安上がりである。
「クロワッサンでいい」 と云う殊勝な方もいる。
ふ~ん、腹減るなあ~
問題は、私ではない。
魚たちだ。
魚たちは、人間に、
釣りという狩猟遊びで、
人生の最後を迎える事の多い動物である。
その最後の食事が、
我々釣り人が、使っている<エサ>となるのだ。
エサの代表格は、エビである。
鯛なんぞは、いつもいつもエビを食っていながら、
最後の晩餐まで、エビである。
まあ、それでも、最後に食事が出来た魚は、良しとしよう。
一番の問題は、ルアーだ。
疑似餌だ。
エサに似せて作られたニセモノ。
金属であったり、ゴムであったり、プラスチックであったり・・
幼児が口に入れると、お母さんに叱られる類のモノだ。
つまり、ルアーで釣られた魚は、
最後の晩餐が
アルミニウムだったワケだ。
最後のごちそうが、
プラスチックだったワケだ。
先述の、又エビを食った鯛くんなんざ、羨ましい限りだ。
エビを食えただけでも、幸せと思わなければならないのだ。
今日、釣られたこのサバなんて、
針に
糸クズを巻きつけただけの疑似餌が最後の食事となった。
『糸クズだよ、糸クズぅ!』
さすがに、お怒りになられ、真っ青になっているサバ様である。
あの世に行き、閻魔魚王に、最後に何を食べたか尋ねられ、
「つい、糸クズに心が奪われてしまいまして・・」
などと、
口が裂けても言えまいぞ。
(針はずしが上手くいかず、
口が裂けているのだけど)
時折、釣れた魚を捌いていると、胃の中から、
大量の食料(エサ)が出てくる事がある。
ちょっと、ほっとする。
(ふむ、こいつは最後に幸せを味わったな、よしよし)
だから、私はニセモノエサで釣った魚は、
頭の先から尻尾まですべて食べてあげる。