
南の島、与論島(よろんとう)の役場にゆくと、壁の紙に
こんな文句を書いてある。
<お通夜では刺身を出さない>
以前、ココでも、紹介した事がある。
そしたら、
「イシマルさん、まあたぁそったら、ウソついたらイカンよ」
とお叱りを受けた。
『ウソばついちょらんて』っと、
反論しても、しょうがないので、上記の写真に収めてきた。
はて、葬式に、
刺身が
あるのと、
無いのとでは
どう違うのだろう?
「皆様、本日は誠に有難うございました。
些少では御座いますが、故人を偲んで、御飲み下さい」
ビールが並べられ、おのおの、コップに注いで、飲み始める。
<つまみ>の類は無い。
食べ物として、寿司があるだけだ。
基本形は、飲み会の呈をなしていない。
「ケンチャンもお馬鹿な人だったねぇ」
『そうだねぇ』
やがて、腹を満たした皆々、三々五々帰ってゆく.
(与論島の役場の人は、コレを願っている)
ところが、ここに、
刺身を持ち込んでみよう。
「オオっ、こりゃええ」
ビールをそこそこに、焼酎が注がれる。
急に腰が重くなる。
泣き上戸が現われる。
笑い上戸も現れる。
怒り上戸も暴れ始める。
昼に始まった葬式が夜になっても、終わらない。
「ケンチャンも、お馬鹿な人だったねぇ」
『お馬鹿っちゃなんネ!あいつは馬鹿ちゃうぞ』
「まあ、おめえよりは、ましかな」
『なぁんだとぅ!表出ろぅ!』
ってんで、喧嘩が始まる。
しんみりの葬式が、いつの間にか、
ただの宴会になる。
その原因が、<刺身>であったワケだ。
偉大なる、
刺身の実力。
刺身に込められた日本人の思いは、かくも強い。
違う言い方をするなら、
日本人は、かように、
刺身に弱い。
~
刺身に弱い~
この真実を、与論島の役場の方は、見事、見抜いたのである。
~拍手!