
あっ!
忘れた! バスタオルを!
ここは、温泉場の観光ホテルである。
地下にある大浴場に、ゆったり浸かった。
脱衣場に戻った。
「あっ、
バスタオルを忘れた!」
どうしよう?
あいにく、たった一人の入浴だった。周りに人は誰もいない。
フロントに繋がるテレホンもない。
え~と、え~と、どうしたらいい?
ええいままよ!
ホテルの浴衣を裸の身体にそのまま纏った。
随分水分が肌に付着していたらしく、浴衣がペタペタ張り付く。
下着を懐に突っ込み、エレベーターに向かう。
地下から、6階に向かうべくボタンを押す。
ウイ~ン、ガタン
エレベーターが、1階で止まった。
お姉さま、おばちゃまが、どっと乗ってきた。
皆、私と同じ浴衣を召している。
その視線が私の<身体に張り付いた浴衣>に注がれる。
(まあ、この方、汗ビチョじゃないの)
(あら、浴衣のまんま、湯船に入ったのかしら)
ガタン、6階に着いた。
「すみません、降りま~す」
ひえ~やばかったぁ~
部屋の前に辿り着き、ドアを見上げて。
「あっ、忘れた、部屋の
キーを、脱衣場に」
くるり、きびすを返す。
再び、満員のエレベーターで、妖しい視線の洗礼を受けた。
ガタン、地下に着く。
パタパタスリッパをはたいて廊下を走る。
ん? アレは何だ?!
前方の通路に、
パンツが落ちている。
見たことがあるパンツだ。
慌てて、懐をさぐるも、さっき突っ込んだパンツがない。
すなわち落としていたんだ。
と、向こうから、シャナリシャナリご婦人が二人、
湯上りに歩いてくるではないか!
その二人の視線が下に落ち始めたではないか!
ないか!
ううぅ~どうしよう?
パンツを
拾うべきなのか?
知らんぷりするべきなのか?
それとも・・
逃げ出すべきなのかぁ~~~~?