♪~ハッピバースディ~ツーユー~♪~
灯りが消えました。
やってきました!
ローソクが灯ったバースディケーキが!
イチゴがたっぷり乗っかったショートケーキだ。
ふ~~!
主賓が炎を吹き飛ばす・・やには、
パッっと灯りが点き、ケーキは
どこかへ持っていかれる。
その
どこかで、何等分かにされるのだ。
・・通常は・・・
(そうだ、こうしてみよう!)
私が提案した。
「みんな、ケーキの周りに集まれ!各々、皿とフォークを持ち、
手を伸ばして、勝っ手に好きなだけ捕れ!」
『え~いいの?』
「いい、好きなだけ食べろ!」
大人8人、子供4人がショートケーキの周りに集まった。
「よ~いドンはない。いつでもどうぞ!」
どうぞ、と言われても、なかなか手が出ない。
考えてみれば、
丸のケーキを自分で削って食べる習慣などない。
そんな大それた行為をした覚えもない。
この大きなケーキに、
いきなりフォークを突き刺す勇気が湧かない。
この食べ方は何かに似ている。
ナンだろう・・・?
そうだ! <鍋> だ。
鍋をみんなで ツツク のに似ている。
全員が、最終絶対量を感じ取りながら、鍋の中身を摂取する。
取り過ぎていないか?
もっと取っていいのか?
いい塩梅を探している。
我々は、鍋を長い間食べてきた。
自分で、掬い取る行為に慣れてきた。
その行為をそのまま、ケーキに移行したのだ。
ところが、ケーキは今まで、切られて出てきた。
等分されて、差し出された。
鍋に例えると、鍋奉行に
ひとりづつ注がれて出されたのである。
その長いケーキの歴史があったのに、
いきなり、鍋方式にしろと言われても、すぐに手が出ない。
・・と、
ひとりの子供が、ズブっとフォークを突き立てた。
よし、この子は、冒険家になるだろう。
真っ白いケーキの一角が崩れた。
一端傷つけられると、あとは速い。
大人の手が次々に伸びてくる。
ズブリ、ズブリ、ほじられ、掘削されてゆく。
イチゴが、戦利品として、奪われてゆく。
かくして、ケーキの鍋方式という食べ方が、発祥されたのだ。
<遠慮>という日本古来の鍋方式を踏襲しながら・・・