<ナン> が好きだ。
ナンとは、インド料理に於けるご飯だ、パンだ。
小麦粉をどうとかする料理の中で、ナンは、
私の食生活に於いて、跳びぬけて、上位に位置する。
例えば、ナンは、それだけを食べ進んでも構わない。
何も付けずに、食べ続けることを厭わない。
ナンとワインがあれば、その日はそれで終わっても構わない。
ナンを千切る行為自体が楽しい。
きちんと千切れない愛おしさとでも言おうか、
ふっくらしている癖して、もっちりした触感が妖しい。
今、食パンと比べようとしたのだが、
敵対相手をけなすのは卑怯だと判断し、
ナンの優れだけに、焦点をあてることにした。
しかも、ナンは、とんでもない援軍が存在するワケだ。
誰もが知っている・・誰もが惚れているカレーだ。
世界一美味しい小麦粉を、
世界一美味しい香辛料で食べる
ズル。
そう、インド料理は
ズルい。
そ~んなの美味いに決まってるじゃ~んという、
愛称抜群の御二方を、
「さあ、どうだ」とお出しするのだから・・
よお~し、ナンを自宅で作ってみよう!
ってんで、インド料理屋のご主人に、訊いてみた。
「ナンを自宅で作りたいんですけんど」
『無理デスヨ』
「へっ、なんで?」
『アノ釜は200度まで、熱っためます』
「200度?」
『で、チミは何枚焼きたいのですか?』
「一枚か二枚」
『不経済ネ、コノ釜、値段高いヨ』
「覚悟します」
『
覚悟する位だったら、毎日ウチに食べにおいで』
インド本国でも、自宅に釜はないらしい。
覚悟しないのが、正しいナンの食べ方だそうだ。
スイカが嫌いだ、カレーが嫌いだ、
という人には会った事はあるが、
ナンが嫌いだ・・と言う人にまだ会った事がないのだが・・
夜明け前