
世界一長いソロバン
<大きい人を見た話>
その昔、東京は渋谷のパルコの前の交差点に、
赤い格子縞の公衆電話ボックスがあった。
そのパルコの裏の稽古場で、
芝居の稽古に励んでいた私達役者が、
毎日の日課で、あの日もランニングに出かけた。
タッタッタッタッ
いつものように、パルコ前の交差点の信号を渡ろうとしていると、
その先に、異様な光景が・・
電話ボックスの脇に立っている詰襟の制服を着た人物。
その身長たるや、電話ボックスとほとんど変わりないではないか!
おおお~~
我ら、眼球が飛び出しそうになった。
っと、彼が、学生カバンを二つ抱えている事に気づいた。
ん・・?
横にある、電話ボックスに目をやる。
ボックスの扉が開いたままになっている。
扉の外に、真っ黒い塊が飛び出している。
よお~く見てみると・・
それは、
おけつだ。
ボックス内に目を凝らすと・・
鉛筆で、ダイヤルを回している人間がいる。
(まだ、ダイヤル式の時代だった)
誰かが、つぶやいた。
「おかやま だ。」
そう、バスケットの、当時日本代表の岡山選手だ。
身長2メートル20センチ(?)を超えると言われた岡山選手。
ループシュートで有名な、日本バスケット界のスターだ。
ちっぽけな電話ボックスなぞ、入れなかったらしい。
その日、感動で、眠れなかった覚えがある。

大きく伸びたパパイヤの木