《大きい人を見た話》
あれは、20年位前の北海道のホテルだった。
朝、モーニングサービスの食後のコーヒーに
鼻を引くつかせていた。
っと、私の席の前をドタンドタンと走る外国人がいる。
セルフのコーヒーを取りにいったらしい。
それにしても、図体がでかい。
いや、肩幅が広い。
1mくらいありそうだ。
モモの太さなんか、ホテルのエンタシスの柱ほどありそうだ。
ドタンドタン
そいつが再び戻ってきた。
そして、私の横の柱の影にいた人物に、うやうやしく手渡した。
なに?そのデカイ図体は弟子だったのかい?
親ビンは・・誰?
そお~と、頭を傾け、柱の向こうを盗み見る。
ああっっああああっっ!!
<
ブッチャー>
往年の悪役プロレスラーである。
先ほどのコーヒーを運んでいたレスラーが、
子供のように小さく見える。
茶褐色の肌のブッチャー。
額に何本もの切られた筋があるブッチャー。
ブッチャーも丁度食後のコーヒーに、鼻を引くつかせていた。
その時、知ったのだ・・ブッチャーの大きさを。
あのカップは、今私が飲んでいるのと同じカップだよな。
ブッチャーは、右手の指を<OK>の形にして、
カップの取っ手を掴んでいた。
つまり、親指と人差し指の先っちょを閉じる形で
カップを掴んでいた。
(それは、私も同じだ、)
しかし、そのカップの大きさが、
OKの輪っかの内側の大きさと変わらなかったのだ!
(意味解んない人は、OKってしてみな)
ええ、うっそ!と思うでしょ。
なんで解ったのかと、思うでしょ。
それはね、余りにも驚いたイシマルが、
柱の横から顔を出し、失礼にも覗き込んだのだ。
んで、声を挙げたのだ。
「
デケ~~~!」
すると、ブッチャーが、静かに、目を吊り上げた。
ゴクン・・(私のノドの音)
ギラリ・・ブッチャーが歯を見せた。
私は、今でもあれは、
ブッチャーが微笑んでくれたものだと信じている。
テーブルに象?