
今から27年ほど前、私は越路吹雪の熱唱ビデオを見ていた。
某テレビ局から借りたものだ。
様々なドレスを着た越路吹雪が、素敵な歌声を響かせていた。
イシマル27才、
つかこうへい氏の劇団にいた。
ある日、つかさんが、イシマルを見て、
《こいつを女装させたら、
越路吹雪に似ている》と閃いた。
言われてみれば、彼女は、美人系ではない(失礼)
どちらかと云えば、男が変装している風貌をしている(大変失礼)
ただし、歌は、誰もが認める素晴らしさに満ちていた。
しかして、
越路吹雪化への特訓が始まった。
化粧、髪型、歌い方・・
しかし、作演出家つかさんの発想は、僕らを遥かに超えていた、
実は、イシマルは
越路吹雪の弟なのだ。
彼女は、歌う事に疲れ脅え、もはや人前に出るのが
辛くなったのだ。
その為、弟であるイシマルが、こっそり
代役をやったのだ。
バレないように化粧を施し、テレビでも歌い、
舞台でも歌い、ありとあらゆる代役をやってきたのだ。
ひょっとしたら、あなたの見た越路吹雪は、
弟であるイシマルなのかもしれない!
ってな、舞台をやった。
<寝盗とられ宗介> という舞台だ。
時は移り、現代・・
さっき、BS2を見ていたら、
その時、お借りしたビデオの映像が流れているではないか!
う~む・・
現在の私よりちょいと若い越路吹雪である。
素晴らしい歌に聞き惚れる。
越路吹雪、56才没
当時、東京の中野にある斎場で葬儀が行なわれた。
その日、ウソ弟であるイシマルは、
こそっと斎場に出向き、こそっと手を合わせたのであった。

黄色いコスモス