
《だっしふんにゅう》
漢字で書くと、《脱脂粉乳》
この言葉を聞いた途端、
懐かしみながら、怒り出す人がいる。
「アリャあよ、マズかったんンだ!」
コブシを握りながら、述懐する。
戦後、10年以上経っていた頃、
小学校や中学校の給食の飲み物と云えば、
《脱脂粉乳》だった。
先生たちは、コレを、ミルクと呼んで生徒に飲ませた。
今思えば、アレは、読んで字の如く、
脱脂した粉乳を、水で戻し、
ミルクと称して生徒に飲ませていたと思われる。
生徒たちは、忌み嫌った。
理由は簡単。
マズイと感じたからだ。
匂いがダメだったという意見もある。
入れ物が、家畜の飼料を連想して嫌だという人もいる。
さて、私だ。
ミルクと言う言葉に反応した。
当時、ミルク(牛乳)は、貴重品だった。
「ミルクを飲みたい!」
切なる思いがあった。
「ミルクみたいなモノを飲みたい!」
切だった。
そんな時、その文字が目に入った。
《粉乳》
乳、という文字が目に入る。
ミルクだ!
飲みたい、その乳を!その粉乳を!
ゴクゴクゴクゴクッ
飲んだ。
毎日、給食の時間が楽しみだった。
「残った分を、お代わりする人をぉ~?」
ハイ!
手を挙げ、カップを持って、ズンドウの前に並ぶ。
並ぶと言ったが、並んでいるのは、3人だけだ。
そして、その3人の頭が、ズンドウを覗き込むと、
なんと、10杯以上のミルクが残っているではないか!
ゴクゴクゴクゴクッ
ぷふぁ~
誰だ?
脱脂粉乳がマズイって言ったのは!