
ホテルの部屋の壁に、絵が掛けてある。
絵であったり、書であったり、デザインであったり・・
そもそも殺風景な壁を、何とかしようという、思惑だ。
ふむ・・
これらの絵は、おそらく、ホテルが出来たその日に、
掛けられたモノと察する。
掛けられたまま、長い年月、
同じ部屋の同じ壁に掛かっていたモノと察する。
客は、同じホテルに泊まる事はあっても、
同じ部屋に泊まる事は、そうそうない。
すると・・壁に掛かった同じ絵を見る事は、ほぼない。
「最上階の角の部屋」
こんな要求をする客は、<ゴルゴ13>以外いない。
さらに言えば、部屋の壁の絵を覚えている客は少ない。
少ないながらも、覚えている客も、わずかだがいる。
・・・私だ。
(
あれっ、この絵、見た事あるゾ?)
以前、このホテルで、泊まった部屋に違いない。
部屋ナンバーは覚えていなくとも、絵は覚えている。
こんな記憶には、うなづける。
・・しかし、こんなバージョンもある。
(
あれっ、この絵、見た事あるゾ?)
さっきと同じ感想を述べているではないか。
来たこともない初めてのホテルで、
同じ絵を見つける。
ソレは、いわゆる、コピー絵である。
もちろんどちらも、コピー絵である。
「え~とぉ、この絵、どこで見たんだっけ?」
しばし、たたずむ。
思い出せない。
でも、嬉しい。
非常に少ない確率で巡り合った絵を眺め、心躍らせている。