
ツッシーが、スキー場で失敗をやらかした。
寒い場所としては致命的な失敗だった。
昼食レストランのトイレに入った。
そこに物置台がなかった。
外した手袋の置き場がない。
困った。
仕方なく、ジャーと流すトイレタンクの上に、なにげなく置いた。
そこまでは、まあ、よくやる事だ。
やがて事を済まし、安心したのかコックをひねった。
ジャ~~~~
身支度を整え、振り返り、そこに悲惨な光景を目にする。
手袋が、水たまりの中に沈んでいる。
すぐさま取り出したものの、びしょ濡れだ。
手で絞ると、濡れぞうきんのように、水が絞り落ちる。
いつまでもトイレから帰ってこないツッシーを待っている私の元に、
哀しい顔をした本人が戻ってきた。
「今、マイナス何℃ですかネェ」
お馬鹿な顛末を語るツッシー。
私が渡すティッシュを必死に手袋に突っ込み水分を取ろうとする。
しかし、一度濡れきった手袋はそうそう簡単に乾きやしない。
濡れた手袋で、マイナスの気温の中、
時速数十キロでの疾走は無理だ。
『これ、使いなヨ』
私のインナーの手袋を貸してあげた。
薄手だが、素手よりましだろう。
そして、2時間後・・・
そろそろ終わりにしようとしていた時間に、ツッシーが声を挙げた。
「ボ・ボク、担いでいるリュックの中に・・」
『中に何?』
「
予備の手袋がある事を思い出しました!」
ふ~ん、良かったネ。
すべてが終わって、帰りの車の中で思い出さなくて・・・

そういえば以前、同じような話があったナ。
《又々忘れられたグレープフルーツ》2011;11月7日