
熊野古道は、杉とヒノキの植林の道である。
昔々のその昔は、植林ではなかったハズだが、
今では、ほぼ完ぺきに植林の中を歩く。
よって、日陰を歩いている。
なんたって高さ30m近い杉林である。
真夏でも涼しいと思われる。
山の頂上は通らない。
最も高い部分が、峠となる。
峠に着いたからといって、視界が開けるワケではない。
峠と標識に書いてあるだけで、
杉の林の中であることに変わりはない。
ゆえに、カメラのシャッターを何度も押すのだが、
おしなべて同じような写真が並んでしまう。
時折、遥か昔の住居跡が現れたりする。
なぜ分かるかと云うと、石垣の跡がのこり、
平らになっているからだ。
その住居跡の平地にも、杉が植えられ、
この先、長い年月の間に、石垣も埋もれてゆくだろう。
中には、その遺跡を発掘している現場もあったりする。
縄文とか弥生とかの時代ではなく、
どちらかといえば、近世の遺構である。
通りかかった外国人がカメラを向けている。
われらが、ポンペイの遺跡をたずね、
シャッターを押す姿に似ているかもしれない。
「ホエア~カムフロム?」
『トキオ!』
東京在住の外国の方だったりする。
古道の各所に、『〇〇王子』おうじと呼ばれる場所がある。
神様が宿るところという意味で、小さな社がある。
お賽銭を入れ、拝む。
たまたま小銭がポケットにたくさんあったので、
次から次に現れる〇〇王子に困らなかったが、
ぜひ、小銭は持っていきたいものだ。
ひっそりとたたずむ王子は、
「拝む」という本来の気持ちがこもりやすい。
静けさの中で、両手を合わせていると、
心の中で言葉をつぶやかなくとも、
森羅万象という、
まさに
森のなにかに感謝している自分がいる。
様々な山に登っているが、これほど静かな山の中も珍しい。
静かだと思っていても、なにがしかの雑音は聞こえる。
飛行機が上空をとんだり、
ヘリコプターが飛来したり、
遠くの高速道路のにぶい音が聞こえたり・・・
熊鈴の大合唱であったり・・
熊野古道の森自体が、人里離れているのと、
杉の林が、マフラー効果を発揮し、
音を吸い取っているのではないだろうか?
漫画では、杉林の中に、こう描くハズだ。
シ~~~~~~~~~~~~~~ン