![]() 部屋が広い、広すぎて勉強に実が入らない。 100畳間で、受験勉強は無理だ。 成績がどんどん落ちていく。 それなりに、悩みを持っていた、青春だったのだ。 そんなある日、 たくさんあるトイレのひとつに入った。 すると、その大きな壁に、墨で文字が書き殴られてある。 <人間 無限の可能性有り> 達筆だ。 書体を見れば、父親が書いたモノだと、すぐにわかった。 けんじろうが、お受験の悩みを抱えている事を 察したのだろう。 ちょっと照れたワザを使ったようだ。 その壁は、漆喰(しっくい)だった。 真っ白な壁に、行書の文字が美しかった。 それ以来、そのトイレばかり利用していた。 一ヶ月ほど経った頃だ。 父親の会社のおえらいさんが、尋ねてきた。 トイレに入った。 (このお屋敷は、あくまで社宅なのだ) 『落書きをしたのは、誰ですか?』 「わたしです。」 『すぐに、消しなさい!』 いい大人が、叱られている。 おえらいさんは、父親の洒落っ気が、理解できないようだ。 「かしこまりました。」 かしこまって返答する父親。 かしこまって、おえらいさんを見送る父親。 しかして、そのトイレの文字は消される事とな・・・る 筈だったのだが、 いつまで経っても、消される事はなかった。 父親は、自分の出世より、けんじろう君の将来を 大切にしたのである。 ありがとう #
by ishimaru_ken
| 2006-08-24 05:16
| 昔々おバカな話
![]() 大分県、別府市の大きな家に住んでいた。 名前を<青雲荘>という。 そういう名前の、元国際旅館だったのだ。 部屋数が、何十とある。 風呂も男と女に別れ、 男風呂だけでも、でっかい湯船が3つあった。 一度に20人は入れた。 庭には、テニスコートが2面あった。 この家がどれほどデカイか・・・ 試しにテニスボールを思いっきりぶっ叩く。 ボールが落ちたところから、さらにぶっ叩く。 それをもう一回繰り返しても、隣には届かなかった。 妹が、両親と喧嘩して、リビングを飛び出した事があった。 みんなで探したのだが、見つからない。 結局、屋根の上にいるのを見つけたのは、2時間後だった。 けんじろう君の部屋は、100畳あった。 舞台も付いていた。 ははは、別府の温泉旅館の宴会場を、マイルームにしたのだ。 自称柔道三段の父親と、よく柔道をしていた。 寝る時の、布団の位置がむずかしい。 端っこで寝たり、真ん中で寝たり、斜めってみたり 毎日変える。 問題は、受験勉強だ。 広すぎて、集中出来ない。100畳もあるのに、 一番隅っこの角に、机を置き、勉強する。 それでも、背後の広大さに背中がスースーして、 やはり、集中出来ない。 母親が朝ご飯を知らせるのに、内線電話を使う。 歩いてくると、一分かかってしまう。 掃除は、少しずつする。 二ヶ月くらいかけて、一周する。 トイレも毎回違うところでする。 だから、紙は持って歩く。 自分の部屋から、玄関まで行くのと、 玄関から、バス停まで歩くのと、距離がかわらない。 遅刻の原因になりうる。 なぜ、そんなところに住んでいたのかって? 知りません・・・父親に聞いて下さい。 たぶん、住んでみたかったんでしょ。 #
by ishimaru_ken
| 2006-08-23 08:13
| 昔々おバカな話
![]() 中学2年の時の家が、そこだった。 とにかく広かった。 余りに広いので、三家族で住んでいた。 なのに、他の家族と一ヶ月に一回くらいしか出くわさなかった。 夏休みのある日。 『池がきたない!洗おう!』父親が言い出した。 恐らく、200年以上経っているお屋敷だ。 建ってからこれまで、池なんか洗った事はないだろう。 なにしろ、大きな池だ。 栓は見つかった。 抜いた。 水が抜けるのに、一週間かかった。 この頃になって、慌てだした。 錦鯉が100匹くらいいるのは分かっていた。 だが、良く見ると、黒い鯉、 つまり真鯉がその10倍位いるのだ。 父親が、馬鹿でかいバケツを大量に借りてきた。 ボンボン放り込む。 それからというもの、このバケツに水を注ぐのが 仕事になった。 池を洗う。200年以上分の泥が流れていく。 (これは、いい泥なんじゃないかなあ) 『おー綺麗になったあー!』 父親だけは、喜んでいる。 『食おう!』父親が、立ち上がった。 真鯉を食おうというのである。 そうか!ここは元々料理旅館だった。 厨房を探してみると、直径1メートルくらいの 馬鹿でかい中華鍋が出てきた。 ひとつの中華鍋で、バケツから掬って来た鯉を唐揚げにする。 もうひとつの鍋に、中華のアンを作っておく。 さすれば、中華の鯉の餡かけが出来るのだ。 50センチくらいある鯉を唐揚にするのだ。 この日から、毎食、一人一匹、鯉を食べ始めた。 5人家族で、一食に5匹。 朝昼晩の3食、一日で15匹。 池に水が溜まるまでの一週間、食べ続けた。 最大で、70センチの鯉を揚げた時は、30分くらいかかった。 『飽きた!二度と、鯉は食わん!』父親は始めるのも唐突だが、やめるのも、唐突だ。 満水式には、友達も呼び、鯉と共におおいに 泳いだのだった。 #
by ishimaru_ken
| 2006-08-22 07:35
| 昔々おバカな話
![]() 大分県は竹田市にある武家屋敷。 風呂が外にあった。外というのは、間違いで、 正しくは、風呂のための建物があったのだ。 脱衣場の部屋があり、浴室がある。 風呂釜は、五右衛門風呂だ。 真ん中に、丸い木の板を浮かべて、 それにバランスをとりながら浸かると、 自然、下に沈んでいく。 まわりの鉄の部分に肌が触れると 「アッチッチッ!」 子供なら二人は、ゆうに入れた。 『お湯加減どうだい?』 外に、焚口がある。 燃料は、マキだ。 みなさん、マキで風呂を沸した事がありますか? 無い方、どうか気をつけて下さい。 こんな目にあわない様に・・・ ある日の事、両親が用事で出かけるという。 留守番はけんじろう、よろしくね・・という事になった。 お風呂沸しといてね・・という事になった。 子供は、焚き火は大好きである。 マキを燃やすのも大好きである。 小学6年のけんじろう君、早く風呂を沸したかった。 火をつけたかった。 てなこって、昼過ぎには、風呂の焚口に座り込んだ。 新聞を丸めて、マッチを擦る。 小ワリから燃やしていく。だんだん火が大きくなる。 風のとおり道を作ってやる。 火が燃えるのを見るのは、面白い。 夢中になる。 どんどんマキを放り込む・・・ ・・日が暮れた頃、両親が戻ってきた。 家の中が暗い。 お風呂の建物に行って見ると、 けんじろうが焚口に座り込んでいる。 顔が、大ぶりのスイカほどに、腫れ上がっている。 すぐに、火のそばからひっぺがす。 風呂場の中から、シュンシュン音がする。 父親が入ってみると、五右衛門ガマの水がほとんど 無くなり、最後の水がはじけている。 そういえば、焚口の横に積んであった 一ヶ月分のマキが消えている。 けんじろうがクベタのだ。 けんじろうが燃やしたのだ。 一ヶ月分炊いたのだ。 その夜、大熱を出して、石丸家の次男坊は寝込んでしまった。 きっと、両親は嘆き悲しんだに違いない。 お兄ちゃんは、あんなに立派なのに・・ #
by ishimaru_ken
| 2006-08-21 08:52
| 昔々おバカな話
![]() この竹田の武家屋敷は古かった。 そして、発見した! けんじろう君の部屋に、隠し部屋があったのだ。 敵に襲われた時に隠れる為のものらしい。 なんと、天井にあるのだ。 天井からぶら下がった紐を引っ張ると、 ギィーと音を発てて、真っ黒い階段が現われる。 上から降りてくる。 そっと、登っていく。 広さは4畳半だが、高さは、座ってれば頭は付かないくらい。 明かりは当然ない。 小学6年生のカッコウの遊び場になった。 『廊下がきたない!』 突然、父親が言い出した。 そりゃそうだろう、古い屋敷だもの、木が真っ黒になっている。 それを、きたないと呼んでいいのだろうか。 『磨こう!』 父親は、迷いのない人だった。 家族5人がタワシを持ち、廊下のハシからゴシゴシやり始めた。 半日やった。 1メートルほど、白っぽくなった。 白っぽくはなったけど、綺麗になったとは思えない。 『やめよう!』 父親は引き際も、迷いのない人だった。 『庭に野菜を作ろう!』 又、父親が言い出した。 庭って言ったって、普通の庭じゃない。 築山があったり、池があったり、ご立派な庭である。 何百年か経った庭園である。 そこを掘り返し始めた。 シベリア抑留から命からがら帰還した、父親にとって 野菜を植えていない地面が許せないらしい。 男手3人、一日で、畑を作ってしまった。 そこに、ナス、きゅうり、トマト、おくら etr 土地が肥えていた分、いくらでも実がなった。 『廊下がきたない!』 え~!だからもうやめようよ~ よしこうしよう・・と父親はツルツルのベニヤ板を 買ってきて、張り巡らした。 おまけに、けんじろう君の部屋にも、張り巡らした。 今風にいうとリフォームである。 戦争から帰ってきて間もなかったからなのか、 <文化財>的な考えを知らない、父親であった。 そして、あまりにもベニヤがツルツル過ぎて、 年中、家族の誰かがころんでいた。 『壁がきたない!』 やめようよお~! #
by ishimaru_ken
| 2006-08-20 12:11
| 昔々おバカな話
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